工作キットの活用方法

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☆学校での工作キット活用方法☆

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  ○活用方法
○導入のお話(どのように生まれたか)をします。
○ももからのメッセージをお伝えください。
① ハートを乗せてみよう。
② ハートや各パーツの活用事例
③ 福祉用具の存在と大切さを知る
④ お友達や多くの人とのコミュニケーション・ツールに
⑤ キットを使った人形劇
⑥ 小学校の特別支援学級での工作キットの活用例


○導入のお話

 「みなさんは車いすのおもちゃを見たことはありますか?」

 ここに日本で初めての車いすのおもちゃがあります。

 病気で歩けないももちゃんという女の子が3歳の時に「ママ、どうして 

車いすのおもちゃはないの?」とつぶやきました。

ママは一生懸命さがしたけれど、当時見つけることはできませんでした。

誰か作ってと最初は思っていました。でも何年たってもおもちゃはありません。

ももちゃんが4歳の時、歩く練習のため、1年の入院をしました。  

ママは小さな子どもたちが親元を離れてリハビリをしている姿を見て、

私も何かできることをがんばろうと思いました。

そしてデザインの学校に行き、パソコンでイラストを書くことを学びました。

8歳の時、足の手術のため、ももちゃんはまた入院しました。

またリハビリのため1年の入院が決まっていました。手術を怖がってる、

ももちゃんのために、ママは生きていると楽しいこと、素晴らしいことも

いっぱいあることを伝えたくて、入院前、アメリカのディズニーワールドへ

旅行しました。

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8日間の初めての電動車いすの旅でしたが、旅先で

であった、100人近くの人が小さな車いすのももちゃんに笑顔で

「こんにちは」と声をかけてくれました。車いすのももちゃんにであった、

小さな5歳くらいの子どもに、「笑顔でこんにちは」の大切さを伝えて、

自ら実践するアメリカ人のお父さんを見て、ママは素敵だなって思い

ました。そして、とても爽やかで、気持ちいい!と感じたのでした。

「笑顔でこんにちは」はまるでみんなをしあわせにする魔法みたいね」と、

小さなももちゃんと話し合いました。日本でも優しく「笑顔でこんにちは」が

広がって欲しい、心のバリアフリーを伝えたい、そんな気持ちで日本に

帰国しました。ももちゃんは入院しました。手術、そしてリハビリもがんばり

ました。入院中、ママはももちゃんと色んな話をしました。

そしてこの時期、ママはものづくりを学びました。二人で色んなアイディア

を出し合って生まれたのがこの車いすの工作キットです。

みんなに大切な心があることを優しく伝えるおもちゃのような教材に

仕上げました。

そして、あなたの大切な人を未来、あなたが優しく守るために、みんなに

知ってほしいことを小冊子絵本にまとめました。イラストも絵本も

パッケージもすべて手作りです。

未来への願い、希望をこめて作りました。みんなで読んでください。



ももかからのメッセージ

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みなさんのクラスには「車いすのお友達」はいますか?

ぜひ、この車いすのおもちゃと 「みんなに知ってほしいこと」の手作り

えほんを通して、私とお友達になってください。

そして、みなさんの作った車いすのお友達をぜひ、みんなのクラスメートに

してください。 このおもちゃとえほんを通して、色んな個性のある

お友達がいることや、車いすの上には「心」も乗っていること、そして、

「すべての人にあなたと同じ大切な心」があることを、少しでも感じて

もらえたら嬉しいです。

私と同じ車いすのお友達には、そのまま車いすのままのあなたが

素敵であることを伝えたいです。

もっともっとそのままの自分を好きになってほしいです。



①ハートを乗せてみよう
このキットは、オリジナルの車イスを創ったりお人形を作ったりする

作業を通して「みんなちがってみんないい」という大切なことを学ぶ

ことを、大きなテーマにしています。それを子どもたちが、実感できる

きっかけ作りの一例として「大きなハートのパーツ」が入っています。

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このハートパーツを「魔法のハート」パーツと呼んでいます。

ワークショップでは、このハートに、自由にみんなの心を描いてもらって

います。

子どもたちは、嬉しそうに創造しながら、自分の心を描きます。

出来上がった「魔法のハート」を自らが組み立てた車イスに乗せて、

自分の心が乗っている感覚も味わえます。

こうした作成を通して、車いすが身近なものになります。

その上で、「みんなの大切な心が今、車いすの上に乗っているね」、

「色んな素敵なハートがあるね」とそれぞれが作成したハートの良さ

を見つけて、みんなで肯定します。

「どれも素晴らしいね」と自己肯定感を高めます。


そのあとに、「みんなの心が今、車いすに乗ってるね」

「そうね、車いすの上には、みんなの心が乗っているのと同様に、

人が乗っているだけではなくて、何が乗ってる?

そう、心も乗っているのね」とつなげていきます。

車イスの上には大切な「こころがのっているよ」ことを心で

気づき感じて学ぶきっかけ作りに活用しています。
 かわいいハートをのせることで自らがこころに感じること、気づくこと

はなんでしょうか。

それは、「もし自分が乗っていたらどんな気持ちかな?」、

「お友達はどんな気持ちだろう?」といったことを、心に感じて、

みんなで話し合うこともできます。

また、「例えばあなたがメガネをかけたらあなたは変わるので

しょうか?」、「例えばあなたが歩けなくなったらあなたの心も

変わるのでしょうか?」といった色んな問いかけが子どもたちに

できると思います。

 私自身がさせていただいたワークショップの感想にも「ハートを

のせてみるところがよかった!」とご感想を頂きます。

たくさんの子どもたちに「魔法のハート」に込められた思いが、

優しく届いているようです。また、ワークショップ後、

「この押しボタンは車いすのももちゃんには届くのかな?(5歳)」

など、今まで関心を持たなかったことに興味を持つようになった、

「近所の車いすの子に、声を掛けてお友達になりたいと思った」(8歳)

「自分と同じ、心があるという、当たり前のことに気づいた」(中学生)、

「今まで障がい者、健常者と分けていたけれど、それは人間が

作った言葉で、心は一緒だと気づいた」(高校生)、

「街の中で誰かが困っていたとき、恥ずかしいという自分の枠を

取って、勇気を出したいと思った」(大学生)など感想がよせられて

います。

② ハートや各パーツの活用事例

東京の小学校の事例です。工作キットを先生が作成し、小冊子絵本

「みんなに知ってほしいこと」を読むことを通してみんなでいろんなことを

話し合い、考えました。

また、工作キットの型から、クラス全員のハートといるかの型をおりがみで

作成し、メッセージを書きつなげ、クラス作りに役立てました。

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③ 福祉用具の存在と大切さを知る

おまけパーツにはさりげなく福祉用具のカタチも入っています。保護帽、装具、クラッチ(杖)です。「福祉器具」の役割や大切さ、「みんなちがっていい」ということを伝えるきっかけ作りにお役立てください。

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「これなあに?」の答えは、上の半円形が保護帽、杖のような形の2本は
クラッチ、長靴のような形のものは足の装具です。
 保護帽は心身の障害から転倒する危険がある場合、あるいは頭への
衝撃が致命的な怪我となるおそれのある障害者が頭部保護のために
着用するものです。クラッチは足に障害のある人の歩行を補助する杖です。足の装具は、足首などを固定することによって歩行を助けたり、
足の腱に緊張がある場合に姿勢を安定させるために用いる福祉器具です。色んな福祉用具が存在することや、大切なものであることをどうか伝えてください。

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          クラッチの着色例  足の装具の着色例

写真のように、お人形にクラッチをもたせてたたせることができます。
バランスをとって立つことは、難しいことですが、できるかどうか、試して
みましょう。

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 身体障がいのない人にとっては当たり前な「立つこと」、「座ること」。
でも、「これって本当はすごく難しいこと」。色んなお話をしたり、考えたり
するきっかけ作りにも役立ちます

④ お友達や多くの人とのコミュニケーション・ツールに

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大きいハートと小さいハート、星型、花型の他、車・飛行機・熊・イルカなどいろいろなパーツがあります。これらのパーツは、すべて白色。着色して自分で遊んだり、飾るのもいいのですが、これにメッセージを添えて、メッセージ・ボードとしてお友達に渡すのもいいでしょう。
また、手作りの車いすキットを自分のよく行く店や病院などに、飾ってもらうこともできます。作成者であるあなたの思いを込めたメッセージとともに、 車いすキットが飾られている場所に来た車いすの人は、どのように感じるでしょうか。私自身も車いすの子どもも、車いすのおもちゃが飾られているような場所では、「自分が受け入れられ、歓迎されている」という「受容と承認の感情を持つのです。そう感じる障がい者は、きっと多いと思います。  多くの人の目に触れるところに、車いすおもちゃが飾られていること自体が、「心のバリアフリー」を目指していることのシンボルにもなるでしょう。
この工作キットをもって街に出て、多くのこととバリアフリーやノーマライゼーションを語り、広めるチャンスにしてもらいたいと願っています。

⑤ キットを使った人形劇
人形と車いす、さらに、その他のパーツも使って、人形劇を創作するという授業を試みている高校があります。将来、保育士や幼稚園教諭を目指す高校生が選択する保育系科目の授業で、人形劇を演じるのはもちろんのこと、台本の創作から小道具を作りまでを高校生が行い、地域の子ども向けに実演をしようとしています。
それは、バリアフリーの人形劇を見る幼児たちにとっても、ノーマライゼーションを体験する良い機会となっていますし、このようなバリアフリー劇を作り上げ、演じている高校生にとっても、これからのユニバーサル教育の実践力を育くむチャンスになっています。

<台本例>
バリアフリー人形劇「車いすにのったアリと飛べない蝶々」

<物話のあらすじ>
車いすのアリさんは、他のアリにから「おまえ邪魔だよ」などと、迷惑がられたり、いじめられています。でも、困った仲間をみると、「えさはあっちにあるらしいよ」とカブトムシに教えてあげたり、迷子のカマキリに「帰り道はこっちだよ」と教えてあげたりしています。ある時、自分の歌声に自信をなくしたキリギリスがやってくると、「自信をもって練習したらいいよ。僕も車いすを練習したら、動けるようになったから」と励ましました。そして、次に、空を飛べない怖がりの蝶がやってきました。車いすのアリさんは「怖がらないで、自分のできること、やりたいことに挑戦しなきゃ」と励ましました。そして、キリギリスが「チョウさんのために歌を歌うよ」といって、車いすのアリさんと「蝶々、蝶々、菜の葉にとまれ・・・」と歌い始めます。それにつられて、他の仲間たちもこの歌を合唱し始めます。勇気をもらった蝶は、「みんなありがとう」といって大空に舞いました。こうして、車いすのアリさんは、皆の人気者になり、女王アリから結婚を申し込まれたということです。めでたし。めでたし。

⑥ 小学校の特別支援学級での工作キットの活用例

平成24年度 藍野大学医療保健学部看護学科 

看護研究卒業研究論文より

テーマ:「特別支援対象児童への学習支援の可能性と課題」
-広汎性発達障がい児に対するアクティブ・ラーニングを活用した
  授業プログラムの構築-

                        藍野大学医療保健学部看護学科 西村 悠香
                                         (ご許可頂きました)
Ⅰ.はじめに
障がいがあることにより、通常の学級における指導だけでは個人の能力を十分に生かしていくことが困難な子どもたちについては、1人1人の障がいの種類・程度等に応じ、特別な配慮の下に、特別支援学校(平成18年度まで盲学校・聾学校・養護学校)や小学校・中学校の特別支援学級(平成18年度まで特殊学級)、あるいは「通級による指導」において適切な教育が行われている。文部科学省の特別支援教育のデータによると、近年、養護学校や特殊学級に在籍している児童生徒が増加する傾向にあり、通級による指導を受けている児童生徒も平成5年以降増加してきている。平成23年5月1日現在、義務教育段階において盲学校・聾学校・養護学校及び小学校・中学校の特別支援学級の在籍者並びに通級による指導を受けている児童生徒の総数の占める割合は約2.54%(約27万人)となっている。また、学習障がい(LD)、注意欠陥/多動性障がい(ADHD)、高機能自閉症、広汎性発達障がい等、学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒数について文部科学省が平成22年に実施した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」の結果は、約6.3%程度の割合で通常の学級に在籍している可能性を示している。
これらの動向を踏まえ、本研究では、特別支援を要する児童生徒のうち、広汎性発達障がい児を対象に、ペーパークラフトを通じた能動的学習方法(アクティブ・ラーニング)を用いることで、指導者と児童の間のより円滑なコミュニケーションの機会と経験を生み出し、自分の思いを、児童なりによりよく表現できるようコミュニケーション能力とスキルの進展をはかっていきたいと考えた。

Ⅱ.研究目的
児童の持つコミュニケーション能力及び学習能力に対して、多面的に働きかける授業プログラムを立案し、本児童担当の小学校教諭及び同校のスクールソーシャルワーカーかつ大学教員等の指導と連携して、これを試行し、対象児童の能力の進展のさらなる可能性を探求することが本研究の目的である。また、本プログラムは、ペーパークラフトを通じた能動的学習方法(アクティブ・ラーニング)を通して、人への思いやりの心について理解し、児童の人権に関する認知の深化をはかることを学習目標として設定した。「思いやりの心とは何か」をテーマとして、個々の児童・生徒の発達段階に応じた、自他の人権についての理解を深めて行きたいと考えたからである。特に、本時の指導計画では、「車いす工作キット」を教材として用い、自他に模した人型クラフトの作成も同時に活用することで、対象児童が「思いやりの心とは何か」を考え、人権と福祉に関する理解を深めることを基盤として、福祉教材のより有効な活用方法を検証することも本研究のねらいの一つである。

Ⅲ.研究方法
1. 研究デザイン 本研究は、授業プログラムの立案と試行による事例研究である。
2. 研究対象    本研究の研究対象は、特別支援教育の対象児童である。
3. 研究期間   本研究の研究期間は、2012年4月23日~2012年11月9日である。
4. データ収集方法および分析方法

前述のように、学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童は、通常の学級で生活できている他児童・他生徒と比較すると、コミュニケーション能力が乏しく、自分の思っていることを自由に表現できない児童の比率が高い。これを踏まえ、特別支援の対象児童へのサポートプログラムの進展が少しでもできればと考えた。そこで、読売新聞・毎日新聞・毎日新聞(東日本版・西日本版・和歌山版)・朝日新聞・大阪日日新聞等の記事として全国的に取り上げられている、「心が育つ工作キット」を教材として使用することにした。この工作キットは、オリジナルの車椅子を創ったり、人形を創るという活動を通して、「みんなに大切な心があるということ」「みんな違ってみんないいということ」「色んな人がいるということ」、といったことを楽しく遊びながら自然に学ぶことができる教材である。素材は、環境に優しい牛乳パックの再生紙を使用しており、通常のダンボールよりも固くできており、それぞれのパーツは台紙から手で簡単に取り外すことができ、この取り外すという行為も子どもたちには面白く、かつ安全・容易にできるよう設計されている。したがって、組み立てることが容易にできるように工夫されている。以上に述べたような利点を踏まえ、「自分を愛して他者をも愛す心」を育むためのツールとして活用した指導プログラムを立案し、その実践と事後評価を行った。

Ⅳ.倫理的配慮
 この研究における倫理的配慮については、臨床研究と教育学研究において確立された原則に依拠し、①個人情報の保護に関する配慮、②本プログラム実施時における特別支援学級担任・介助支援員等小学校教職員の同席と協同、③本研究授業実施校の校長・学級担任・特別支援学級担任団、その他関係教員に対しする同プログラムの事前提示と了承など、本授業プログラム実施に対する配慮を重ねた。また、児童名等は仮称である。

Ⅴ.結果
 1)本研究授業にいたるまでの経過
筆者は、4月23日(月)、5月21日(月)、5月28日(月)、11月9日(金)という4回にわたって特別支援にかかわる対象児童と関わった。
初回(4月23日)は、特別支援の対象児童の生活状況・他児童とのコミュニケーションの様子を知るために通常学級での授業風景を参観した。授業時間は45分であるが、前半20分を過ぎた頃から落ち着きをなくし始めた。また、授業中に先生が指示したことがすぐに行うことができず、周りがしているのを見てやり始めることから、自分に自信があまりない様子であった。グループワークをする時も自分から積極的に話そうとはせず、黙っている様子が伺えた。この時点での観察においては、対象児童を小学6年生の成長発達の視点で見てみると一定の課題とすべき部分が見られた。

①自己表現力(とりわけ異年齢・異年代の大人との間のコミュニケーション)が同年齢の発達段階に比して未発達な側面がある、②学習面を中心として、自分自身にあまり自信が持てず、周囲の状況を見てからでないと、自己の学習行動をおこすことができない、④文字ツールによるコミュニケーション漢字の習得が未熟である、⑤考えを整理することが不十分、等が考えられた。
次に筆者は、2回にわたって昆虫の工作キットを用いて、特別支援の対象児童へと接した。その理由としては、いきなり車椅子の工作キットを用いたのでは、特別支援の対象児童への発達段階にはそぐわないと感じたからである。したがって、まずは小学生男児にとって身近であろう昆虫の工作キットを用い、教材に慣れ、特別支援の対象児童へとのラポールを形成する必要があると考え、このような方法を取った。特別支援の対象児童は、作業を始めるまでは少し不安そうな表情をしていたり、筆者の表情を頻回に見ていた。しかし、作業を始めると、カブトムシ、クワガタ、カマキリ、バッタという4種類の工作キットを見せると、自らクワガタを選択したり、自ら工作キットを袋から取り出すという自主的な行動が見られた。最初はどうしたら良いか分からなかったためか、表情の変化は乏しかったが、筆者が1つくり抜くと、やり方がわかった様子であり、筆者が行ったやり方と同様のやり方で行っていた。また、細かい部分は鉛筆を使用するとやりやすいということを筆者がやってみせると、またこれも理解したようで自分でやっていた。
 しかし、作業中に筆者が手を出すと、少し落ち着きをなくしたり、ビクビクしている様子も伺えたが、「上手だね」「丁寧にできているね」などと、対象児童の頑張りを言葉に表すと、表情が緩んだ。また、工作キットに色を塗る時も非常に丁寧に、ムラなく全体的に塗れていたのだが、クレヨンを使用する際、どこが先端かを気にしていて、先端が見つからないと、少し落ち着きをなくすといった行動が見られた。しかし、作業後は、積極性・優しい笑顔が見られ、やらされているという様子は感じられなかった。
 次に、3回目(5月28日)の状況については、前回筆者に会ったのは1週間も前のことであるため、筆者のことは覚えていないようであったが、以前よりも算数教室に入ってくる時の表情が柔らかであった。また、「楽しみにしてくれていたの?」と筆者が聞くと、頭を横に振ったことから、精神的負担がまだ少し残っているのかもしれないと感じた。また、特別支援の対象児童は自分の目の前に人の視線があると落ち着きをなくしてしまう傾向があるので、その点についても工夫したことで、前回よりも、筆者の表情を伺ったり、周りの環境を気にする回数が数回程度になった。

 2)本研究授業での指導案(略案)
指導計画 (西村:T、特別支援対象の児童:C(複数)とする。)
学習過程 配時 学習活動 留意点
導入 10分
●昨日まで修学旅行であったため、その話も交えて、対象児童とのコミュニケーションを図る。
○T:「今日はこれを作ってもらおうと思って持ってきたよ。これが何か分かるかな?」
C:「車椅子。○○さんも乗ってるやつ(隣にいる児童を指差す)。」
T:「そう。これは、今言ってくれたように、車椅子って言うんだよ。じゃあ、車椅子にはどんな人が乗るか分かるかな?。」
C:「足の不自由な人。」
T:「そうだね。車椅子に乗ったら、足とか体が自由に動かない人でもいろんなとこに行けるんだけど、1人でどこにでも行けるわけじゃないんだよ。どうしてか分かるかな?」
C:「(頭を横に振る)」
T:「そうだね。乗ったことがないからよく分からないよね。」
T:「じゃあ、クワガタの時みたいに作ってみようか。」
●クワガタの工作キットを見せ、以前何をしたか思い出してもらう。

●車椅子に乗る人は自分の身近に存在するということを意識させる。

展開 25分     工作キットを作成    

○T:「作るのも、前より早くなったんじゃない?」
C:「…うん(頷く)。」
T:「全部組み立てられたら、絵の具で塗ったりしたら分かりやすくなっていいかもしれないね。」
C:「…うん。」
吉田先生:「いや、○○さん本当にすごいわ。普段学校で、友達が車椅子に乗っているのを見たりしているから、余計にイメージしやすいのかもしれないね。」

○T:「タイヤだから黒色に塗ったんだね。やっぱり普段見ているから、イメージがついているんだね。車椅子の色は、水色なんだ。元気になれる色だね。」
C:「うん(少し強く頷く)。」
T:「そんなに丸くなっているんだね。道とかまっすぐの所を通る時は通りやすそうだけど、階段とか電車の段差とか、四角い所を通る時は1人で通るのは、少し難しそうだね。」
C:「困っている人たまに見る。」
●クワガタの時と作り方は同じであるということを伝え、構えてしまわないように働きかける。

●対象児童の頑張りを認め、ほめる。

まとめ 10分
● 工作キットが完成したところで、本時のまとめをする。
○T:「車椅子に乗ったら、何に困るのかな。」
C:「階段とか登れないです。」
T:「そうだね。他の道より少し高さがある所に1人で行こうと思ったら、こけちゃうよね。じゃあそんな時、○○さんならどうして欲しい?」
C:「助けて欲しい。」
T:「そうだね。みんな思うことは一緒なんだよ。だからもし道とかで車椅子に乗っている人が困ってるのを見たら、手伝ってあげるといいね。最初は恥ずかしいかもしれないけれど、人に優しくする事って本当にすてきなことだからね。」

○T:「今日私と喋っててどう思った?」
C:「…車椅子の人が困っていたら、声かけてあげようと思った。」
T:「あ、そんなこと思ってくれたんだ。」
C:「…うん。」

本時の終了    
●実際の生活に結び付けて、対象児童が答えやすいような発問をする。

●“思いやりの心”のテーマにふれる。

●対象児童の気持ちになってコミュニケーションを図る。

 3)授業時、授業後の様子
4回目(11月9日)の状況については、前回から半年程度経過してしまっているため、前回の振り返りを踏まえて挨拶をし、特別支援の対象児童が所属している6年生は昨日まで修学旅行であったため、その話も交えながら、特別支援の対象児童とのコミュニケーションを図った。その中で特別支援の対象児童は、修学旅行先で見たものや、何をしたかなど、少し言葉足らずではあるが自分の口で説明しようとする様子が見られた。今までの関わりでは、「うん」といった発言がほとんどを占めていて、表情をよく観察することで特別支援の対象児童の感情の変化を把握することが、特別支援の対象児童との関わりの中で大事なコミュニケーションツールの1つであった。しかし今回は、「うん」以外にも「この前は、クワガタ作った」「クワガタに、黒とか茶色とか赤とか色塗った」「これ(ペン)使ってもいい?」「ありがとう」「これ落としたよ(私が机から落としてしまった工作キットの部品を拾ってくれた)」などの自主的な発言が増えた。また、今回工作キットを作成している間はほとんど話さず、非常に集中しており、色を塗る時もとても丁寧に、そしてどのようにしたら最も効率よく塗れるか工夫出来ていた。それに加え、特別支援の対象児童は自分ではなく、自分以外の人が物品を落とした時に、自分の動作を止めてでも落としたものを取ろうとする心づかいが何度か見られ、既に思いやりの心を持ち合わせてきていると感じた。
また、車椅子の工作キットが完成した後に、筆者が「もし、特別支援の対象児童が車椅子に乗っていたとするよね?それで少し高さのある所に行きたいんだけど、1人じゃこけてしまうかもしれない。そんな時、特別支援の対象児童ならどうして欲しいかな?」と聞くと、「助けて欲しい」という発言がみられたり、「…車椅子の人が困っていたら、声かけてあげようと思った」という発言がみられた。また、話している時の視線についても今までは聞き手の方側に視線を合わせるなどということはほとんどしなかったのに対し、今回は話す時は大抵の場合、聞き手の目を見ながら話すというような成長が見られた。
このように、たった4回しか特別支援の対象児童と関わることができなかったが、1回目の関わりでは、授業中に先生が指示したことがすぐに行うことができず、周りがしているのを見てやり始めたり、自分に自信があまり持てず、グループワークをする時も自分から積極的に話そうとはせず、黙っている様子であった特別支援の対象児童へが、4回目の関わりでは、大抵の場合、聞き手の目を見ながら話すというような成長が見られた。

Ⅵ.考察
1)特別支援の対象児童に関する課題
4月23日に初めて特別支援の対象児童と接し、筆者が思い描いていた広汎性発達障がい児のイメージと比較すると、あまり異常は見られず、他の児童と比較してみても特に目立って遅延している様子は伺えなかった。しかし、以上のように対象児を観察していると、小学6年生の成長発達の視点で見てみると、①自己表現力が未発達である、②積極的に他の児童と関わろうとしない、③自分にあまり自信が持てず、周囲の状況を見てからでないと、自分の行動に移すことができない、④漢字の習得が未熟である、⑤考えを整理することが不十分、という以上のようなことが発達段階上での課題点と考えた。その中でも特にコミュニケーション能力が乏しく、自分の思っていることを自由に言えない所があった。

2)特別支援の対象児童に関する課題点への展望
 指導者(筆者)が、本児童担当の小学校教諭及び同校のスクールソーシャルワーカーかつ大学教員等の指導と連携して、共同的に児童に働きかけることで、児童の持つコミュニケーション能力及び学習能力に対して、多面的に働きかけていくことで特別支援の対象児童は少しずつ自分を表出していける様子が見られるようになった。その中での関わりにおいては、「難しいね」「困ったね」「それはだめだよ」というような否定的な表現を避け、「できたね」「この前より上手になっているね」「頑張っているね」「丁寧に出来ているね」など、肯定的な表現を使ってコミュニケーションするように意識的に実施していくことが有効であるということが分かった。このように、まず、特別支援の対象児童の精神的負担を軽減し、特別支援の対象児童の性格・傾向を配慮することが大事であると感じた。
 このようなアクティブ・ラーニングを通じて、前項にも述べたような、「助けて欲しい」や「…車椅子の人が困っていたら、声かけてあげようと思った」という今までは見られなかった、他人に自分の思いを伝えたり、自分はどうしたいかという自らの思いを少しずつ表出していけ、他人への共感性を持つことができるのではないだろうか。

Ⅶ.結論
今回、本研究では、「心が育つ工作キット」を使用し、この工作キットでオリジナルの車椅子を創ったり、人形を創るというアクティブ・ラーニングを通して、人への思いやりの心を持たせることができた。また、児童の人権に関する認知の深化をはかり、個々の児童・生徒の発達段階に応じた、自他の人権についての理解を深めることができたと思う。また、ただ工作をするだけではなく、共同的に児童に働きかけることで、児童の持つコミュニケーション能力及び学習能力に対して、多面的に働きかけ、対象児童の能力の進展のさらなる可能性を探求できたと考える。このことから、特別支援の対象児童へだけで解決できる問題ではなく、周囲からのサポートも必要不可欠であるということが改めて分かった。「難しいね」「困ったね」「それはだめだよ」というような否定的な表現を避け、「できたね」「この前より上手になっているね」「お姉ちゃんよりだいぶ上手だね」「頑張っているね」「丁寧に出来ているね」など、肯定的な表現を使ってコミュニケーションするように意識的に実施し、特別支援の対象児童が何を言おうとしているか、特別支援の対象児童の動作の変化はどのような感情の変化からきたのかを理解することが大事なのであろう。このように、多面的な視点からの検討によって、本研究のような研究結果が得られたのだと考える。
本研究では、少なくとも2人の特別支援の対象児童に対する本研究授業プログラムを実施できた。その結果、本研究は特別支援の対象児童に関して言えば、人への思いやりの心について理解し、児童の人権に関する認知の深化をはかり、また対象児童が人権や福祉に対する関心を高められる、可能性はあるといえる。また、ペーパークラフトを通じたアクティブ・ラーニングを用いることで、指導者と児童の間の、より円滑なコミュニケーションの機会と経験を生み出し、自分の思いを、児童なりに、よりよく表現できるようコミュニケーション能力とスキルの進展のきっかけになったのではないかと考える。

Ⅷ.謝辞
今回の卒業研究にあたり、プログラム試行に協力いただいた小学校並びに藍野大学医療保健学部の諸先生方には、多大なるご指導を頂いた。深く感謝申し上げたい。

Ⅸ.引用文献、参考文献
1) 文部科学省(2012): www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm
2)徳田克己,水野智美(2005):障害理解 心のバリアフリーの理論と実践(第1版),P1~P50,明石書店,日本
3)水野智美(2008):幼児に対する障害理解指導(第1版),P1~P240,文化書房博文社,日本
4)矢野百花(2005):みんなに知ってほしいこと(第1版),P1~P20,こどものきもち舎,日本
5)グニカ・ガーランド(1999):あなた自身のいのちを生きて-アスペルガー症候群、高機能自閉症、広汎性発達障害への理解(第1版),P1~P54,かもがわ出版,日本
8)上野一彦,市川宏伸(2010):図解 よくわかる大人のアスペルガー症候群(第1版),P1~P135,ナツメ社,日本
9)磯部潮(2005):発達障害かもしれない 見た目は普通の、ちょっと変わった子(第1版),P1~P220,光文社,日本
11)中山和彦,小野和哉(2010):図解 よくわかる大人の発達障害(第1版),P1~P144, ナツメ社,日本
12)庄司順一,久保田まり,奥山眞紀子(2009):アタッチメント(第1版),1ページ~90ページ,明石書店,日本
14)岡田俊(2007):心の臨床a・la・carte(第26巻2号),P1~P184,星和書店,日本
15)心を育てる工作キット